大地に咲く花

運河から取ってくるこの花は“垣根桜”と言うらしい。特徴は、桜のようにたくさんいっせいに咲いて、小さな花がたくさん地面に落ちることだろう。

山桜が、ハハカと言い、これはおそらく桜の古語だろうが、ハハカはハハキ(箒)とつながる語であろう。つまり“蛇”ということと関係がある。

蛇の古語が、ハハとカカで、ハハはハハキ(箒)や、アメノハハキリの剣など。斬られるオロチ(蛇)がハハ(羽羽)である。

カカは、鏡の語源だとされていて、鏡(カカミ)はカカ-ミで、蛇の視座だというが…とぐろを巻いた蛇の視座…鏡餅…その場合になにを見ているかというと、とぐろの中だと考えられる。それは、中に含まれている空間で、“クラ”を形成し、外側からはよく見えないわけだ。

 

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鏡餅=カカミ餅

古代においては、蛇の形象は“陰陽相合”であるといい(吉野ひろ子)、とぐろの体幹部が女性器であれば、そこからもたげた鎌首が男性器、あるいはより単純に、横からみた直線的な外形が“幅”、蛇の視線に同化する頭部の「・」が奥行きで、蛇は前~奥行き方向にしか進まないから「・」が主となる。

おそらく、古代人は、散った桜の花びらを、大地に咲いた花だと考えたのだろう。つまり桜は、花びらが落ちた後、もう一度、地面の上で満開の花をつける、と。そしてしかも、今度は、風に吹かれて、自由に舞い踊る。これは明らかに、“死後生”を思わせる風景である。

大地に散った桜の花は、大地に咲いた花となり、その時、世界は転倒している。つまり、そこに“鏡”が生ずることになる。

そして実は、その、散った桜の作り出す世界そのものが、世界の本質としての虚像、鏡の中の姿であり、その意味で桜は死んで後、再生する。その地上と死の国の往来が、“鏡=カガミ”として、地上と死界とを往来する、死と誕生の神としての蛇の神様に重ねられていたのだろう。

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桜の古語、ハハカ