扇のルーツは蛇であるという吉野裕子さんの初期の研究

民族学吉野裕子さんが、蛇の研究をやる前に、扇子を研究していた。主婦のころ、日本舞踊をやり始めたのがきっかけだそうだ。

「これは何だろう?」。

この着眼点が並ではない。

ふつう「扇子とは何か」などということは考えない。

そして、資料を調べたり、学者に聞いても分からないということで、当時、専門の研究者がいないということが判明した。

ところが、偶然であるが、吉野さんの学生時代の教師でアメリカ人の女性が、日本の扇の研究をやっていたことが分かった。これが吉野さんの研究生活の原点となる。

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扇の特徴は、空間を双つに分かつことにあるといえる。

逆に言えば、裏と表の空間をつなぐということになろう。

古くは「日の扇子、月の扇子」があり、男と女に対応している。

また、伝統的には、女性の霊性が上位であるので、このような双対的な空間においては、女性の霊的な働きが主導することになる。

初版の『扇―「性」と古代信仰の秘密を物語る「扇」の謎』p.95では、

神社の原型である御嶽(うたき)では、神木の蒲葵(ビロウ、もしくはクバ)が祭られているが、この神聖なビロウの葉から、扇が作られたのが原型であると言う。

御嶽をめぐり、「根所」「根神」「根人」などの用語がある。

神の神託を受けるもの・・・根神(にがん)。これは女性である。

神の神託により村を治めるもの・・・根人(ねんちゅ)。これは男性である。

-引用-
しかし今日では、根神(女)は、まだ原初の権利をたぶんにもっているのに較べて、根人(男)は次第に国家権力機構に枢力を吸いとられて、根所の権威は根神の宗教上の力によって維持されている。
-引用-

女性の霊力もさることながら、それをじゅうぶんに認め、それを応用する力が男の側になければ、それは宗教~スピリチュアルの枠内でのみで扱われるにとどまる。

その意味で、霊性をめぐる男性サイドの取り組みというものが意外に重要である?

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裏と表の空間を、ひらひらと扇子が舞う。

これが、シンボリックには、死と生を往来する蛇の生命力に関係する。

要点は、蛇の脱皮というものを、直線的な時間軸でとらえるよりも、双つのものが、同じ場所に“重なってる”という、同時性、二重性としてとらえるニュアンスであろう。

これは先にも書いたが、“アニマンダラ屋”の天海ヒロさんの話では、奄美大島の大島つむぎの代表的な柄である“龍郷柄”が、蛇(=ハブ)のウロコの美しさをデザインしたものであるということだとして、

それは、脱皮を直前にして、古い皮と新しい皮との間にしみ出る浸出液のにごり(=黒い色)と、その下に透けて見える、赤い色、虹色の新たな表皮、ウロコの蠕動運動、その重なりの様子の美しさを現したものであるというようなこと。

それは、双つの空間の、同時性である。

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ところで、“扇子の角度”は正式に決まっているのだろうか?

よくは分からないが、画像検索などすると、定まった角度はないのではないか。

ヌーソロジーでは、双つの空間をつなぐ“比率”というものがあって、それが「黄金比=Φ(ファイ)」であるという。

この場合、180度×0.618(黄金比Φ)として、約111度となる。

図にしてみたが、どうだろうか?

 


扇 角度 001

 

吉野さんの英語の先生のウェルズさんの著作

御嶽(うたき)の神木であるビロウと、その葉から作られる扇子の原型。

 

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